こんな溺愛、きいてない!
人のいない屋上で
遥先輩にくるりと背中を向ける。


「さっきから
なんなんだよ、その態度は?」


「だって」


ぎゅっと唇をかんで下を向く。


「なにを怒ってるんだよ」


「怒ってないけど、……怒ってる」


「意味わかんね」


「だって、遥ちゃん、
勝手なことばっかりしてくるんだもん!

き、キスだって、本当なら、
好きな子にしかしちゃいけないことだし!


そ、それに、遥ちゃんとといっしょにいると
どうしようもなく目立つの!

ただでさえ目立つのに、

もっと目立つようなことばっかり
してくるからっ、

もう一緒にいたくない!」


じわりと滲む涙を
必死でこらえる。


「なんでそんなに、こだわるんだよ。
つうか、『遥ちゃん』に戻ってるし」


屋上で、
眉をしかめる遥先輩から視線をおとす。


分かってるよ、
こんなのただの八つ当たりだって。

遥先輩だけが悪いわけじゃない。


でも自分でもどうしたらいいか分からない。


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