こんな溺愛、きいてない!
「鈴之助、派手な顔してるし、
個性あるしな。 

すこしでも周りと違うと、 
たたかれたりするじゃん。

ホント、面倒くせえよな」


言葉の乱暴さとは裏腹に
遥先輩の優しさのこもった温かな声に
心がかすかにゆるむ。


「都内のフリースクールを
探してるときにね、
鈴之助、スカウトされたの。

そこからは
トントン拍子にここまで来たんだけど」


「でも、どうしてそれが凛花のコケ生活の
地味メイクにつながるんだよ」


納得いかないという顔で
遥先輩が、口を尖らせる。


「もし、
私が鈴之助のいとこだって知ったら、
鈴之助目当てで
声をかけてくる人がいると思う。

私が軽く口にしたことが
あの子に迷惑をかけることに
なるかもしれない」


「だからって、
そこまですることないだろ。

人間関係が狂わされるのが嫌なのは、
ま、ちょっと分かるけど」


「ちがうよ、
私はいいんだよ、大丈夫だよ。

亜由や奈央はそんなことで
私への態度を変えたりしない。

ただ、私が、
鈴之助に迷惑かけたくないから」


すると、遥先輩が
腑に落ちないといった顔で
私をのぞきこむ。


「お前は、鈴之助に迷惑かけるようなこと
絶対しないだろ?」


黙って視線を落としたまま
首を横にふる。


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