こんな溺愛、きいてない!
つまり、
遥先輩はあっち側の人間なんだ。

花組も花組。 
バラとか胡蝶蘭的な立ち位置の
花組なんだっ!


草組のなかでも
バクテリア的に過ごしている
地味な私との
生活格差は壮大すぎる。


「個室、とれなくてごめんな」


「はい?」


いったい何の話をしてるんだろう。

怪訝な顔を向けると、
申し訳なさそうに遥先輩が続ける。


「さすがに、当日予約だと
おやじの名前だしてもダメだった」


そっか、
こんな広い店内のほかに、
個室もあるんだ。


へえ、なんだか、もう、
訳が分からないから、 
どうでもいいや。


「とにかく、
次はファミレスとか
ファーストフードでぜひとも、
お願いします」


「マズイじゃん」


そうか、花組ってこういうことか……

もういいや、食べよう。

なにも考えずに一心に食べよう。


このお料理を作ってくれた
コックさんたちに
深く感謝をしながら、

大地の恵みに感謝をしながら、

遥先輩のことも、
遠目で私たちを監視?している
ギャルソンの皆さんのことも

なにも考えずに、一心に味わおう。


前菜を食べ終えると、
遥先輩がゆったりと微笑み、


その洗練された笑顔に
心臓がドキリと飛び跳ねる。


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