本当は好きなのに
「はぁ~……」
家に帰ったとたん私の口からは大きなため息が出た。
「……なんか……どっと疲れが出た……」
ものすごく久しぶりに一緒に帰った、松尾。
その間、私の心臓はドキドキが止まらなかった。
あんなにドキドキしっぱなしでエネルギーを使い過ぎたから、一人になったときにほっとしてその反動でどっと疲れが出たんだ。
もう、松尾、いい加減にして‼
私の気持ちも知らないで……。
……確かに……松尾が私の気持ちを知ることはかなり無理がある。
……なぜなら……私は全く態度に出していないからだ。
松尾のことを……好……き……という感情を……。
私は松尾の前で全く松尾のことを好きという気持を出していない。
松尾に対してだけではない。
私は耀子にも松尾のことを好きだということを一言も言っていない。
前に耀子に「遥稀は好きな人いるの?」と訊かれたときも、私は「いない」と返答をした。
それから他の友達にも「好きな人はいないの?」と訊かれても、私は常に「いない」と返答をしていた。
周りからは「本当に誰もいないの?」と何度も訊かれても、私は頑なに「いない」と返答をし続けた。
私は常に誰も好きな人はいない。という恋愛には全く興味がないという自分を演じ続けた。
それはなぜか……。