本当は好きなのに
「……なんで……なんで……そういう発想に……」
どうして、耀子。
「だって昨日から松尾、あんたのこと『遥稀』って呼ぶようになった」
「……え……?」
「今までは『衣川』だったのに、昨日から急に『遥稀』と呼ぶようになったからさ」
あー、そういうこと。
耀子がそういう発想をしたのは。
松尾が私のことを今まで呼んでいた『衣川』じゃなくて『遥稀』と呼ぶようになったから。
それで耀子は思ったんだ、松尾は私のことを……って。
でも。
でも、それは違うと思う。
それは、ただ……。
「それは、たまたま……」
そう、たまたま。
松尾が私のことを『遥稀』って呼ぶようになったのは、たまたまで特に意味はない。
たまたま私を『遥稀』と呼ぶようになっただけ。