本当は好きなのに



「……オレと一緒に帰るの嫌?」


 やっぱり。

 私がはっきりしない返事をしたから。
 松尾にそう訊かれてしまった。

 松尾にそう訊かれてしまって。
 私はさらに困ってしまった。

 だから。


「……いっ……嫌……とかではないけど……どうして私と松尾が二人で帰らなければならないの?」


 ついこんなことを言ってしまった。


 ……まただ。

 また私はそんなことを……。

 私の悪い癖。

 私は……松尾……好……き……な人と接すると……。

 よくこうなってしまう。

 照れくさくて……照れくさくて……。

 つい突き放した接し方をしてしまう。

 本当は、もっと素直になりたい。

 なりたいけれど。

 どうしても、それができない。

 照れくさくて、照れくさくてしかたがないから。

 だから……。

 だから私は松尾と二人で帰ることが照れくさくて、ついそんな言い方をしてしまった。


「……え……」


 私の言葉に松尾は少し戸惑っている。

 そりゃそうだよね。
 そんな言い方されたら、誰だって戸惑ってしまうのは当然のこと。

 照れくさかったからとはいえ、あんな言い方をしてしまったこと。
 松尾に申し訳なく思っている。

 だから、それ以上余計なことは言ってはいけないのに。

 それなのに私は。


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