本当は好きなのに



 * * *


 始業式が終わった。

 私は学校を出ようと歩いていた。
 すると……。


「遥稀‼」


 ……え……⁉

 その声は……。


「松尾……」


「遥稀も帰るところだろ、一緒に帰ろ」


 え……。

 一緒に帰る……?

 松尾と……?


「…………」


 それは……。


「……? どうした? 遥稀」


「うっ……ううん、なんでもない。……ただ……」


「ただ……?」


「……一緒に……って……」


 思わず、そんな言葉が出てしまった。

 なぜなら……。
 なぜなら私は松尾と一緒に帰ることをためらっているから。

 だって松尾と一緒に帰るなんて……。


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