本当は好きなのに
「遥稀?」
私が少しためらっていると、松尾は私の顔を覗き込むように見た。
「……遥稀」
松尾に名前を呼ばれているけれど。
ためらっているからか、私は、なかなか返事をすることができないでいる。
松尾は私に一緒に帰ろうと言っただけ。
それだけで戸惑ったり、ためらったりするのは、どうなのかと自分でも思う。
のだけど……。
「遥稀……」
…………。
……ごめん、松尾……。
松尾は、ちっとも悪くないのに……。
こんな態度をとってしまって……。