Brillante amore! ~愛と涙のアオハルstory~
現在の時刻、18:40。
設楽先生が合奏の終了を早めにしてくれたので、私とけいはみんなの帰ったあとでも完全下校時刻の18:45に間に合って校門を出ることができた。
4月。もう空が暗い。
「で、なんで一緒に帰ろうとしたの?
彼氏だから、って理由ではないでしょ」
疑問に思ってたことをけいに問いてみた。
「いや、最終的な解はそこになる」
「え?」
いかん、そのまんま疑問が口から。
よっぽど間抜けな顔をしていたのだろう、けいは苦笑した。
「美玲、単刀直入にいうわ。」
「何?」
「もうちょっと仕事量を減らしな。」
え。
「なんで?」
とりあえず理由を聞く。
「美玲今かなり無理してるでしょ。
このままじゃ体壊す。」
「そんなに無理してないけど。」
嘘はついていない。
「それに私学指揮だから。」
私は学指揮。
それが努力しなくてはならない理由。
誰よりも上手くなければならない理由。
仕事が出来なければならない理由。
「その答えは予想してたよ。
だから朝学習の時間にメモ渡したでしょ」
…あれか。
「だけど美玲はがむしゃらに頑張ってさ」
そうかな。
「今日一緒に練習したときだって、笑ってる時の顔が無理やりだったでしょ」
――気づいてたのね。
「どうせ今日も帰ってから何かするんでしょ」
バレた?
すると、突然けいは自転車を倒した。
そして、私はけいに優しく抱き締められた。
「え?何?」
戸惑いのあまり、どうすることも出来ない。
「もっと僕を頼って――!
金管セクションとして、美玲の彼氏としてさ。
愛する人が苦しむところは見たくない!」
いつも穏やかなけいの感情むき出しの声に、私はびっくりした。
「僕は頼りないかもしれないし、美玲がそんなに頑張るのは責任感からだって分かってる。でも、今体のどこかで不調に陥ってるはずでしょ?」
――この男。
「今のままじゃ本末転倒。
部活のためにも、美玲のためにも、それ以上無理しないで。頼って。」
…けいのほうが1枚上手かな。
「…ありがとうけい。
確かに最近寝不足なのよね。」
そこまで言うと、けいはため息をついた。
「やっぱり、目の下のクマすごいよ?」
「老化したのかな?」
私がそう茶化すと、けいは笑った。
「ただの寝不足。」
――そうだね。
「うん、じゃあ帰ったらして欲しいことLINEするってことでいい?」
私の提案に、けいは
「うん。キスしてほしいとかでもいいよ。」
と言う。
――それを耳元で言わないで!
私は報復にけいから身体を離した。
…でもな。
私の頭をなで自転車を戻そうとしたけいに、聞いてみる。
「けい」
「どうしたの?」
「…そのお願い、今してもいい?」
「…なんのお願い?言葉にしてみて」
――っ、この男!
私はけいを軽く睨みながら、お願いした。
「…けい、キスして……?」
「…今軽く睨んだ?」
「まぁ、うん」
「…それ、逆効果。」
「…?」
「目、閉じて」
けいに言われ素直に目を閉じる。
そうすると、私は軽く顎を持ち上げられ――
私の唇とけいの唇が触れた。
「今は外だから、続きは今度ね」
「…!」
どうしよう。心臓がうるさい。
「ほら、帰るよ」
「…わかった。」
結局、りんと待ち合わせした公園まで送ってくれたけいなのであった――