Brillante amore! ~愛と涙のアオハルstory~
夜の公園は暗い。
その中で、ブランコにのるりんをみつける。
「ごめん、どのくらい待った?」
けいと歩いてきたので、待たせたのは当たり前なので、とりあえずこう問いた。
「…5分位?
1回家に帰ってから歩いてきた。」
――なるほど。
道理で自転車がない。
私は荷物をおきブランコに腰掛けた。
「…で、何があったのよ?」
質問すると、りんはため息をついた。
「また問題が増えた。」
「…なんの?」
「司会の2人から聞いたんだけど」
-------❁ ❁ ❁-------
りんの話を要約すると、
2年生リーダーの1人、ユーフォニアムの三上結愛(みかみゆあ)と、仲の良いトランペットの安斉香織(あんざいかおり)が喧嘩して、それに周りが巻き込まれている、という話だった。
しかも喧嘩の発端は男絡みだ。
喧嘩して1週間たった今でも仲直りの気配がないという。
一応2年生にも“リーダー”という形で幹部に準ずるものはある。
ゆう以外の3年幹部はみんな元はリーダー職についていた。
先輩もそうだったことから考えると、余程の問題がない限りリーダーになった2年生はそのまま幹部職のどれかになる、ということになる。
――余程の事がない限り。
「…言い難いんだけど。
その男絡みって、けいなのよ。」
――は!?
りんは話を続ける。
「誰とまでは流石に教えて貰えなかったけど、けいのこと好きな人が部内にそこそこいるらしいのよ」
分かるよ、けいイケメンだし頭いいし楽器上手いし。
「で、結愛ちゃんはある子の相談に、香織ちゃんは別の子の相談に乗ってたわけ。
それをお互いポロッと出しちゃって、口論に発展したんだとさ。」
…まじか。
「いや、彼女私なんだけど」
「知ってる」
まずいことになってるな。
というか、けいモテすぎでしょ。
「で、それだけじゃないのよ」
え、まだあるの。
「美玲、貴方もモテるのよ」
?
「まだ小さいけど、美玲とけいが付き合ってるっていう噂が広まってるらしいの」
噂じゃなくて事実だけどね。
「で、美玲のこと好きな子が部内にいるから、」
はい!?
「けいのこと好きな子は美玲に、美玲のこと好きな子はけいに恨みが向いてるの」
――何その状況、漫画かよ。
「その私とかけいを好きな人ってどのくらいなのよ、ってか誰」
「…誰とまでは言えないけど。2年にも3年にもそこそこいるわよ。」
初耳なんだけど。
「じゃあ仮に『けいと私は付き合ってる』ってみんなに言ったらどうなるかな?」
「…は!?」
驚いているりんをよそに、考えて見た事を伝える。
「いや結構丸く収まりそうだし、何か言われても私とけいの頭で抑え込める気がする」
――根拠はない。
でも、そんな自信がある。
「…それは最後の手段にしよ。」
まぁ、なるべく言いたくないし。
「いいけど」
「じゃあどうやって鎮めるの?」
正直手段が見つからない。
「…考えたんだけど、」
なんでしょう。
「とりあえず私から2人に伝えるの、この2年生の現状の原因は貴方達2人にあるのって」
カマ掛ける気か。
「で、最終的に『けいと美玲のことを考えろ』って言う」
それは私も切実に願ってる。
「もし私とけいのことが2人に伝わってたらどうするの?絶対言われそう」
「…まぁ、知らないって濁しとく。
それに2人のことだから介入する権利はないってことも一緒にね。」
「ド正論じゃん。」
私の軽いツッコミにりんは苦笑する。
「情にかけるより正論のほうがよいってときもあるのよ」
ほう。
「このことけいに話した方がいいと思うんだけど、私から言おうか?それとも美玲が言う?」
――え。
「りんにお願いする。自分が絡んでるからちゃんと伝えられる自信が無い」
正直な気持ちを伝える。
喧嘩の原因は彼氏。
なんだかそう考えると気が重い。
「とりあえず私はこれが言いたかったの。
もう19:20だけど、帰るよね?」
夕飯の時間じゃん。
「帰るよ」
そう言ったところで、ふと思い出した。
「そうだりん」
「何?」
「司会原稿の紙持ってる?」
「…家にあるけどなんで?」
「スプリング当日の動きをExcelでまとめときたいなって思って」
「…程々にしなよ。有難いけど。」
「てんきゅ。」
けいには、体育館のセッティングの動き関係を依頼しよう。
複雑な気持ちのまま、私はりんの家へと歩き出したのだった――――