『妄想介錯人』
【僕の長い長い一日は続く】
夜になって僕はひとり、昼間の彼女のことを思い出していた。
とびきりの美人という感じはしないけれど、とても愛らしい笑顔をする女性だった。
短い時間だったけれど、話もそれなりに上手い方だし、着ている服は上品な匂いを醸し出していて、僕的にはかなり印象が良かった。
何故、僕の未来を知っているのだろうか?
いったい、どれくらい先の未来だったのだろう?
もう一度会おうなんて、どうしてそんなことを云ったのだろう?
もしかして本当に彼女は未来から来た人だったのだろうか?
なんて、いろいろと考えているうちに眠ったんだな、と朝になって気が付いた。
とにかく来週になれば、もう一度会えるんだ。そう思うと何だかガラにもなく少しドキドキしていた。
そして、そんなドキドキもほとんど消えてしまった頃に、いよいよ明日あの珈琲屋へ向かう日となっていた。
夢から覚めると僕は毎日コーヒーをいれる。
そしてこの日は、あの女性のことを思い出した。
つい読みかけの本に手を出し、時間を過ごすと太陽が真上に昇り始めたのに気付き、僕は干しかけの洗濯物にさよならをして家を出た。
珈琲屋までは歩いて行くことにした。