『妄想介錯人』

それから、コーヒーを飲み終え、煙草を一本ずつ吸って店を後にした。




坂道を歩きながら、彼女は楽しそうに会話を弾ませていたが、僕は彼女のその笑顔に見惚れていた為、ほとんどと云っていい程聞いてはいなかった。それでも彼女は一方的に素敵な笑顔は絶やすことなく話し続けた。



そして僕は、少しずつ彼女に惹かれてゆく自分に気が付いていた。




坂の上の上のほうには古い映画館があった。

彼女はそこへ入ろうと云った。僕はあまり見たい映画があった訳ではなかったが、とりあえず時間潰しにはもってこいだと賛成して中へ入ることにした。

上映していたのは何やら古い古いモノクロのフランス映画だったが、どうやら始まってすぐに眠りに就いてしまった僕には映画の内容を全くと云っていい程、思い出せなかった。


映画が終わる頃、彼女がちょうど小さくくしゃみをした為、僕は夢から醒めることが出来たのである。


映画館を出るとすかさず彼女はこう云った。


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