『妄想介錯人』
「映画の批評は是非とも聞かずにおいていて欲しいものだわ。だって、私なんだか途中で眠たくなってしまって……」
そして、恥ずかしそうに僕を見たのだが、僕が彼女より更にもっと早く眠りに就いたことには気が付いていなかったらしいと思った。
もしくは、彼女なりの気遣いなのか?
なので、僕は何もなかったかのように“同感だね”とだけ云って笑った。
彼女はクスクスと笑い、安心したように僕を見たので何故だか僕も安心した。
ふと時計を見ると、かなりの長編映画だったことに気付いた。
だが、おかげで思わぬ睡眠と空腹が手に入った。
それから何を食べようかと二人で悩んだあげく、パスタの美味しい店へ行くことにした。
何故?って、僕の大好物だからだ。美味しいパスタほど人を幸せにするものはない。とさえ、思うこともあるくらいだ。
そして“私もパスタ大好きよ”と云った彼女にますます好意を抱いたのは言うまでもない。
僕の云う美味しいパスタの店は少々映画館から離れた場所にあった為、僕らはタクシーへ乗り込んだ。