『妄想介錯人』

タクシーの中は、暖かく僕はまた睡魔に襲われそうになったが、今度はお腹の虫がちょうどよく邪魔をした。

タクシーが目的地へ着くのは思ったよりも早かった。これといった会話もないまま、僕らは車を降り、店へ入った。


店は繁盛していたが時間帯のせいもあってか、客の足並みはまだそれほどに多くはなかった。そのため、僕らは店の奥の窓際の上等な席へと通された。


僕らは白ワインと人数分より一皿多く注文して、前菜のハーブのたっぷりと利いたソーセージを食べていた。

彼女はソーセージの美味さに目を丸くして、赤ワインよりも白ワインが好きな理由を淡々と僕に語ってくれた。僕はまた、美味しそうにソーセージを頬張る彼女に見惚れていた。



そのソーセージがなくなる頃を見計らって運ばれて来たのは、沢山のキノコとバジリコのたんまり入ったクリームソース和えのニョッキ、それから茄子と挽き肉の絶妙なハーモニーを奏でるミートソースが上に乗った熱々のマカロニチキンパイ、そしてシェフのお勧め焦がし醤油の和風冷製パスタ。(これはシェフのお勧めだけあって皆様には内緒にしよう)


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