『妄想介錯人』
僕は残念そうな彼女をソファーに座らせ、ビールがいいか、ワインがいいか尋ねるとキッチンへと消えた。
そして、冷えたビールと何かつまみになるものはないかと冷蔵庫の中を見渡し、とりあえずビールだけを持って彼女の元へ戻った。
彼女は“何かつまみになるものを作るわ”と云ったが、僕は冷蔵庫の中を他人に見られるのが嫌いだった事と、加えて皆様もご承知の通りに二人共に実はかなりお腹がいっぱいだった為、簡単なものにしようと提案し、彼女も納得した。
そして僕は、一旦乾杯を済ませてからキッチンへ戻り、アボカドと豆腐のディップ(これは僕にとってなくてはならない大好物で毎回買い物の度、わざわざ仕入れをして自分で作ると云うこだわりの一品だ。なので、いつも必ず冷蔵庫には入っていて指定席まである。おっと、長くなってしまったが、しかもヘルシーだ)とクラッカーを皿に載せ、部屋へ戻ると先程までは警戒していた猫がいつの間にかベッドの上で丸くなっていた。
彼女は全く相手にされなかったと寂しげな顔をして僕に嘆いた。