『妄想介錯人』

僕らは互いの仕事の話なんかをしながら酒を飲んだ。酒はビールからバーボンに変わっていた。


彼女は出版社に勤めていたし、僕は小説やその類のようなものを描いて暮らしを立てていた。


彼女は「これも何かの縁かしら」と云った。

話は弾み、途中に笑い声なども交じりながら、夜は益々更けていった。





彼女は明日は昼から仕事なので今夜は泊めて貰えないか?とまるで警戒心もなく……僕がそう感じた。と云うだけのことだが……云ったので、僕はこの部屋に初めて入った女性客を泊めることにした。





彼女がシャワーを浴びる間に僕は食器の後片付けをして、猫をソファーによかし、シーツを新しいものへ替えた。


そして彼女がいる間、この部屋の雰囲気が少し変わっていたことに気付き、猫の隣に腰を降ろし、一瞬睨んだ猫に軽く目配せして煙草を一本吸った。







静かに煙を吐き出しながら、僕は“出逢い”について考えた。







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