『妄想介錯人』
そして……
土曜の夜は来なかった。
それから、二度と彼女と会うことはなかった。
何故なら、これは三年も昔の話だからだ。
僕の時計はそこで止まってしまっている。
それは仕方がないことだったんだ。
僕はとても大事なことに気が付いてしまったから。
この先、これ以上こんなに素敵な気分にはなれないだろうってことに気が付いてしまったから。
他人に云わせれば、なんてこともない、全く面白味もない、そんな僕の話だけど僕は未来で刑事になどなりたくはなかったし、出来ることなら小説家のままでいたかった。
僕はいま、とっても幸せな気分なんだ。人生なんて、みんなそんなものなのだろう。
幸せの基準など知らないから、僕の幸せは僕が決める権利を持つ。
ただ、それだけのこと。