『妄想介錯人』
「しかし、神村の身辺を洗っても結局は何も出なかったっすね。交友関係はほとんどないに等しいですし、まして女の陰なんか全く出てこない。俺、少しはあの作文みたいな女、期待してたんすけどねぇ」
「ウサギ、まだあの作文が引っかかってんのか?」
「だって、三年前には確かにあの作文に出てきた珈琲店もパスタのイタリアンレストランもあったって云うし……」
「まぁ、確かに常連だったらしいがなぁ。それにしたって、“誰かを連れて来た”なんて証言は出なかっただろうが」
「はぁ、いつもひとりだったってことですがぁ…………そういえば、作文に出てくる女も途中から急に現実味無くなりますよねぇ? 会話とか特に……」
「何が引っかかる?」
「刑事の勘ってヤツですよ」