『妄想介錯人』
僕は視力があまり良い方ではないので、少し目を細めて知り合いかどうか確かめようとした。
すると彼女がにっこりと笑ったように見えたので、知り合いだったのかと思ったが、やはりよくよく見れば知った顔ではないことが分かる。
しかし、僕が忘れてしまっている可能性があることを忘れてはいなかったので、いちを僕も笑顔で返しておくことにした。
そして二本目のタバコに火を着けると彼女が僕のところまで近づいてきた。
彼女は僕の向かいの席を指して
「こちらよろしいかしら?」
と尋ねたので、とりあえず
「ええ、空いていますよ」
と答えた。すると彼女は枯れたヒマワリのような色のバッグを脇に置いて腰を掛けた。
「ねぇ、私のこと。ちゃんと見えているの?」