許されない愛
Ⅱ《悩み》 なつきside





「なーつき!帰ろっ!」




「あ、紗里。帰ろっか。」




この子は紗里。入学式で話しかけてくれてから、ずっと一緒にいる。




「あ、まただよ、なつき。」




「え?...うわ、まじか。」





2人が見つめているのは廊下。





「きゃーーー!なつきくーーん!」


「こっち見た!」


「違うわよ!私よ!」





めんどくせぇ。




「はぁ。なーんでなつきはこんなにもてるのー」





私がいろんな女に付きまとわれ、 その上、君付けされている理由、それは.,,




「ま、しょうがないか。女に見えないし。



なんてったってその顔。



そこら辺の男子よりイケメンだわ。」





さらっと褒めた紗里は、私を置いて出ていこうとしていた。




「あ、おい待てって。」






そう、私は世間で言うボーイッシュってやつ。



服もメンズだし、口調も男っぽい。




昔からよく「なつきくん」と呼ばれていた。




自分的にはいい迷惑。




早く帰りたいのに、廊下を通れない。





「こらー!廊下に溜まらない!」






聞き心地のいい声が、私のイライラを抑えてくれた。





「条先生。ありがとうございます。」





「すごいわね。あなたの人気。」





「いや、別に嬉しくないんで。」





「あら、そうなの?」





「なつきー?早くしてよ〜。」





私を置いていこうとした紗里が呼んでいる。






「なんだよ置いていったの紗里じゃん。


じゃ、先生さようなら。」








「あ、待って!徳永さん、白石さん借りるね!」





「え?なんでですか?」




「じゃあ先帰るね!なつきばいばーい!」





「ちょっと話したいことあって、


来て。」






連れていかれたのは相談室。




「先生どうかしましたか?」






「気になってたのよね。親御さんとどうなったか。」






「先生、自分のこと覚えてたんですか?」






「もちろん!その容姿じゃ忘れないでしょ!」






「は、はぁ。」






褒められたのか...?





先生と初めて会ったのは、高二の夏。



オープンキャンパスの個別相談で、親と上手くいってなくて、学校に通えるか分からないと相談した。





「特待生取れたらいいと言ってくれたので



なんとか頑張って特待生取りました。



それ以降はもう何も言ってきませんね。」





「そっか。白石さん頑張ったもんね!



トップで入ってくるし。良かったわ。」





どうしても親と離れたかった私は、新入生トップで合格し、ひとり暮らしをすることになった。





「今日はそれが聞きたかっただけだから。



もう帰っていいわよ。」




そう言うと、先生は席をたち、部屋を出ようとした。





ぎゅ。





気づけば、私は先生の手を握ってた。






「ど、どうしたの?」




「先生、まだ自分は聞けてない。」





「え?」





「先生、付き合ってる人いるの?」






「もう、あなたもそんなこと聞くの?」





「先生答えて。」





私があまりに真剣に聞くから、先生は戸惑いながらも答えてくれた。





「いるよ。もう2年かな。



はい!もうおしまい!さようなら」





そう言い残して先生は出ていった。






「まじかよ。先生彼氏いるんだ。



2年とか、勝ち目ねーじゃん。」





私は、落ち込みながら帰った。




その日はご飯も食べず、ベッドに入った。





「どうしよう。」





静かな部屋に、その声は消えていく。





「よし。決めた。」





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