好きって言えたらいいのに

5


「えーっ!『雷鳴』がCDデビューだって!!」

 正太郎の魔法の手が、私の頭上にかわいい編み込みヘアを完成させた頃、クラスメイトの女子が上げた嬌声に私は衝撃を受けた。
 思わずそちらを振り向く。
 『雷鳴』とは、ヘイちゃんたちの後輩ユニットだ。まだ私と同じような10代の子たちばかりだったはず。年齢順で行けば、次のデビューは『F-watch』だと思っていた。
「あれ?清原大翔は入るけど、幹健吾は入ってないみたい。え?どういうこと?」
 女子たちがスマホ画面を覗きながら、キャッキャと談笑している。

「かさね?どうかした?」
 声をかけられ気がつけば、正太郎と夏葉が不思議そうに私を見ていた。

 私はヘイちゃんと自分のことを学校では誰にも話していない。
 中学時代、なんとなく話したら大変なことになってしまったから。
 2人を信用していない訳ではないけれど、ヘイちゃんやジャニス目当てで近づいてくる人がまた現れるかもしれないのは嫌だった。
「ううん。なんでもないよ。」
 私は首を横に振って、冷静さを装った。

 なんで今朝に限って会えなかったんだろう。
 ヘイちゃんは、きっともう『雷鳴』のCDデビューを聞かされていたはずである。
 ヘイちゃんはどう思ったかな。ショックを受けてないといいけど…。
 私はヘイちゃんのことが気になり、早く時間が過ぎることを強く願った。

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