好きって言えたらいいのに
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「やばい、お兄さん、超すごいですね!」
夏葉の羨望に満ちた言葉に、激しく同意して何度も強く頷いた。
「これをこうしてこうすると、こうなるっと。」
ヘイちゃんのダンスを目の前で見られる日が来るなんて、夏葉様様である。
「これでいい?」
ヘイちゃんが汗を拭って、こちらを向いた。
「オッケーです。動画撮らせてもらいました。」
正太郎がスマホを置いて、ヘイちゃんにお礼を言った。
「悪いけどそれ、恥ずかしいからダンスできたら削除してね。」
ヘイちゃんの言葉に正太郎が無言でうなずく。
「それじゃあ、店番あるからもう戻るわ。じゃあな、かさね。がんばれよ。」
「うん。」
ニコッと笑ったヘイちゃんは私の頭をひと撫ですると、みんなに挨拶をして出て行った。
「すごかったねー。かさねにあんな幼馴染がいたなんて知らなかったよお!」
夏葉が興奮する横で、正太郎が先ほど録画した動画を確認している。
なんだか正太郎がいつも以上に無口なような気がしたけれど、人見知りするタイプだったのかもしれない。
「ごめんね、急にびっくりさせちゃって。」
私が謝ると、2人は「全然」と首を振ってくれた。
それから私たちはすぐに練習を再開した。ヘイちゃんの実演のおかげでだいぶステップが理解できるようになってきた実感があった。
しばらくしてもうすぐ完成するんじゃないかというところで、夏葉のスマホが鳴り響いた。