好きって言えたらいいのに
おまけ
1
池田正太郎、27歳。俺には初恋を拗らせまくった友人がいる。
いつものメンバーで飲み会をしたある日、
「今ならヘイちゃんの気持ち、少しだけわかる気がする。仕事とか、夢とか、責任とかさ。自分の色恋ばかり優先させていたら守れないものってたくさんあるんだよね…。」
友人のかさねはそんなことを言いつつも、ものすごく寂しそうな顔をしていた。
あれだけ自分の気持ちを大事にするよう言っているのに、またこの子は隠そうとして…。そんなふうだから、自分が本当はどうしたいのかもよくわからなくなるんだぞと思う。
「…連絡なんてないよ。もうきっと、私のことなんて忘れているんじゃないかな?」
お馬鹿な子ほどかわいいと言うが、俺は何というか母親のような気持ちでかさねを見てしまう節がある。
「そっかー…。」
俺はかさねの髪に触れ、ままならない気持ちを募らせるその頭を優しく撫でてやった。
かさねは高校時代からのつき合いだが、別段恋愛感情があるという訳ではない。もう一人の友人、夏葉も同様だ。男女の垣根はなく、楽しい、波長が合うから一緒にいる。
夏葉の旦那に一度、誤解されて大変な目に合ったことがあったけれど、それが逆に2人の恋を燃え上がらせたようなので、雨降って地固まった感が強い。
俺は今、自分の夢に文字通り夢中なのでいいが、恋愛がうまくいかず悩むかさねには、夏葉と同様、幸せになってほしいと強く思う。
そんなある日、俺に仕事の依頼が来た。バラエティー番組のヘアメイクを担当してほしいというものだった。
「…あ。」
資料を眺めていると、一人の出演者の名前に目が止まった。