【女の事件】とし子の悲劇・最終回~漆黒の火砕流
第8話
8月10日のことであった。
アタシは、バイト休みを利用して松本城の公園へ散歩に行った。
アタシは、赤茶色のバッグを持ってのんびりと城の本丸広場から史跡庭園を歩いた。
庭園内の木々に止まっているつくつくぼうしがひっきりなしに鳴いていた。
アタシは、史跡庭園をゆっくりと歩いて、市役所側の出入口を出た後、国道143号線から県道を通って、あがたの森公園まで行った。
午後2時過ぎにあがたの森公園に着いたアタシは、森林の遊歩道をゆっくりと歩いた。
アタシは、森林の遊歩道で花束をお供えして静かに手を合わせている80代の女性を見かけたので、声をかけた。
「あのー、すみません。」
「はい、何でしょうか?」
「あのー、おばあちゃんは…毎日こちらでお花をお供えをしているのですか?」
「はい、50年間ずっと続けています。」
「50年間…」
「おじょーちゃん、50年前にこの公園でレイプ事件が発生したこと…ご存知ないのかしら…レイプされて亡くなった女性は19歳で赤ちゃんがいたお母さんだったのよ…」
「レイプ事件…赤ちゃんのお母さんがレイプされた後に亡くなったと言うのですか?」
「そうよ。」
50年前と言えば…
アタシが生まれたばかりの頃だったわ…
80代の女性は、50年前に発生したレイプ事件のことをアタシに話した。
「今から50年前の夏のむし暑い夜だったと思うけど、レイプ事件が発生する前に赤ちゃんの置き去り事件が発生したのよ…」
「赤ちゃんの置き去り事件が発生した…」
「松本駅の近くの駅前広場で、ボストンバックに入れられた状態で発見されたのよ…育てる自信がありません…と書かれた置き手紙とミルクとオムツと一緒にね…赤ちゃんは通りかかった男性に発見されて無事だったけど、赤ちゃんのお母さんは、男に会いに行ったのよ。」
「もしかしたら、男に会いに行く途中で事件に巻き込まれたのかしら…」
「たぶん…そう思うわね…」
「それじゃあ、赤ちゃんのお母さんはこの公園を通って男に会いに行ったと言うのかしら?」
「そのようね…赤ちゃんのお母さんは、ヒョウの覆面をかぶった男に襲撃されたのよ…」
赤ちゃんのお母さんは…
その時に…
ヒョウの覆面をかぶった男に…
シツヨウに犯された…
女性は、アタシに事件の詳細を話した。
「あの日の夜、公園の方で赤ちゃんのお母さんが叫んでいる声と男の恐ろしい叫び声を聞いたのよ…赤ちゃんのお母さんは…ゆうき、ゆうきと…何度も何度も呼んでいた…布が思い切り破れる音と男の恐ろしい叫び声が交錯していたわ…あの日の夜、眠れなかった…だって、叫び声がひどかったので胸がドキドキしたのよ…」
「胸がドキドキした…」
「次の朝、公園の近辺が慌ただしかった…一体何事かと思って公園の方に行ってみたのよ…そしたら、鑑識の警察官が現場検証をしていたのよ…近所の奥さまが、19歳の女性が衣服と下着がボロボロになっていて恥ずかしい姿にさらされて、倒れている…その時、まだ息はあったのよ…カノジョは、担架に載せられて救急車で運ばれた…」
「それじゃあ、カノジョは搬送先の病院で亡くなったと言うことですか?」
「ええ…」
この時、50年前のレイプ事件で亡くなった女性が元カレの実母であったことを知った。
女性は、泣きそうな声でアタシに言うた。
「かわいそうに…赤ちゃん…かわいそう…お母さんの乳房(おちち)が必要な時期に…悲惨な事件で…うううううううううううううううううう…亡くなったお母さんにはもうしわけないけど…カノジョ、亡くなる前に複数の男とトラブっていたのよ…アタシ、その時のことをよく覚えているわ。」
「おばあちゃんは、亡くなったお母さんのことをお助けになられたのですね。」
「もちろんよ…男に付きまとわれているから助けてほしい…切羽つまった声で言うていたわよ。」
「切羽つまった声…」
「他にも、ややこしい事情をたくさん抱えていたわよ。」
「もうひとつお聞きしたいのですが、赤ちゃんのお母さんは当時どんなお仕事をしていたのかな?」
「どんな仕事って…デートクラブよ…ほら…電話ボックスに貼られている小さい紙のことよ。」
「デートクラブ…」
「そうよ…カノジョはデートクラブを利用していた男とたくさんもめ事を抱えていたのよ。」
女性は、多少の怒りを込めて全てを語った。
元カレの出生の秘密を聞いたアタシは、ひどく動揺した。
アタシは、バイト休みを利用して松本城の公園へ散歩に行った。
アタシは、赤茶色のバッグを持ってのんびりと城の本丸広場から史跡庭園を歩いた。
庭園内の木々に止まっているつくつくぼうしがひっきりなしに鳴いていた。
アタシは、史跡庭園をゆっくりと歩いて、市役所側の出入口を出た後、国道143号線から県道を通って、あがたの森公園まで行った。
午後2時過ぎにあがたの森公園に着いたアタシは、森林の遊歩道をゆっくりと歩いた。
アタシは、森林の遊歩道で花束をお供えして静かに手を合わせている80代の女性を見かけたので、声をかけた。
「あのー、すみません。」
「はい、何でしょうか?」
「あのー、おばあちゃんは…毎日こちらでお花をお供えをしているのですか?」
「はい、50年間ずっと続けています。」
「50年間…」
「おじょーちゃん、50年前にこの公園でレイプ事件が発生したこと…ご存知ないのかしら…レイプされて亡くなった女性は19歳で赤ちゃんがいたお母さんだったのよ…」
「レイプ事件…赤ちゃんのお母さんがレイプされた後に亡くなったと言うのですか?」
「そうよ。」
50年前と言えば…
アタシが生まれたばかりの頃だったわ…
80代の女性は、50年前に発生したレイプ事件のことをアタシに話した。
「今から50年前の夏のむし暑い夜だったと思うけど、レイプ事件が発生する前に赤ちゃんの置き去り事件が発生したのよ…」
「赤ちゃんの置き去り事件が発生した…」
「松本駅の近くの駅前広場で、ボストンバックに入れられた状態で発見されたのよ…育てる自信がありません…と書かれた置き手紙とミルクとオムツと一緒にね…赤ちゃんは通りかかった男性に発見されて無事だったけど、赤ちゃんのお母さんは、男に会いに行ったのよ。」
「もしかしたら、男に会いに行く途中で事件に巻き込まれたのかしら…」
「たぶん…そう思うわね…」
「それじゃあ、赤ちゃんのお母さんはこの公園を通って男に会いに行ったと言うのかしら?」
「そのようね…赤ちゃんのお母さんは、ヒョウの覆面をかぶった男に襲撃されたのよ…」
赤ちゃんのお母さんは…
その時に…
ヒョウの覆面をかぶった男に…
シツヨウに犯された…
女性は、アタシに事件の詳細を話した。
「あの日の夜、公園の方で赤ちゃんのお母さんが叫んでいる声と男の恐ろしい叫び声を聞いたのよ…赤ちゃんのお母さんは…ゆうき、ゆうきと…何度も何度も呼んでいた…布が思い切り破れる音と男の恐ろしい叫び声が交錯していたわ…あの日の夜、眠れなかった…だって、叫び声がひどかったので胸がドキドキしたのよ…」
「胸がドキドキした…」
「次の朝、公園の近辺が慌ただしかった…一体何事かと思って公園の方に行ってみたのよ…そしたら、鑑識の警察官が現場検証をしていたのよ…近所の奥さまが、19歳の女性が衣服と下着がボロボロになっていて恥ずかしい姿にさらされて、倒れている…その時、まだ息はあったのよ…カノジョは、担架に載せられて救急車で運ばれた…」
「それじゃあ、カノジョは搬送先の病院で亡くなったと言うことですか?」
「ええ…」
この時、50年前のレイプ事件で亡くなった女性が元カレの実母であったことを知った。
女性は、泣きそうな声でアタシに言うた。
「かわいそうに…赤ちゃん…かわいそう…お母さんの乳房(おちち)が必要な時期に…悲惨な事件で…うううううううううううううううううう…亡くなったお母さんにはもうしわけないけど…カノジョ、亡くなる前に複数の男とトラブっていたのよ…アタシ、その時のことをよく覚えているわ。」
「おばあちゃんは、亡くなったお母さんのことをお助けになられたのですね。」
「もちろんよ…男に付きまとわれているから助けてほしい…切羽つまった声で言うていたわよ。」
「切羽つまった声…」
「他にも、ややこしい事情をたくさん抱えていたわよ。」
「もうひとつお聞きしたいのですが、赤ちゃんのお母さんは当時どんなお仕事をしていたのかな?」
「どんな仕事って…デートクラブよ…ほら…電話ボックスに貼られている小さい紙のことよ。」
「デートクラブ…」
「そうよ…カノジョはデートクラブを利用していた男とたくさんもめ事を抱えていたのよ。」
女性は、多少の怒りを込めて全てを語った。
元カレの出生の秘密を聞いたアタシは、ひどく動揺した。