【女の事件】とし子の悲劇・最終回~漆黒の火砕流
最終回
8月15日辺りから、嬬恋村のアイツの家の近辺は危険水域に突入した。
同時に、浅間山の火山活動も危険な状態になる一歩手前におちいったので、キンリンの住民たちは県外へ引っ越しする世帯が目立っていた。
アイツはこの日、所用で東京に滞在しているため、家を空けていた。
ダンナは、ひるまえに家の近くに到着した。
この時間帯、日本武道館で戦没慰霊式典が開催されている時間帯であった。
家財道具を運ぶトラックのカーレディオから式典の模様が流れていた。
アイツが家に帰ってきた時であった。
アイツと再婚した女が、一階の居間のソファーで男と抱き合っていたのをアイツが見たので、怒り心頭になった。
アイツは、助けを求める形で松本で暮らしているアタシの元へ行った。
アイツは、アタシがバイトをしているファミマに行って、もう一度やり直したいと泣きながらコンガンしたが、アタシは『拒否するわよ』と言うて断った。
アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに並べる仕事をしながらアイツにこう言うた。
「あんたね!!急に都合が悪くなったからアタシとやり直したいと言うけれど、アタシはイヤと言ったらイヤなのよ!!あんたの弟からキツイレイプを受けて、心身ともにボロボロに傷ついているのよ!!あんたはアタシの言うていることがゼンゼン分かっていないわね!!アタシはあんたのことは一生うらみ通すと決めたから!!帰んなさいよ!!」
「とし子…頼む…もう一度とし子とやり直したいのだよ…ゆうきがとし子を犯して身体(からだ)と心をズタズタに傷つけたことは兄であるぼくが全面的に悪いのだよ…一生をかけてつぐなうよ…とし子…オレは…ひとりで生きて行けない…」
「ふざけたことを言わないで!!あんたはひとりの力で生きて行けないから、アタシに助けてくれと言うけれど…アタシにどうしてほしいのよ!?アタシにごはんを作ってほしいのかしら!?それとも、アタシの肌のぬくもりに甘えたいのかしら!?」
「とし子、この通り…オレのそばに帰ってきてくれ…」
「あんたはアタシの前のお嫁さんにも同じようなことを言うてたみたいね…そうでしょ!?アタシの前のお嫁さんにもアタシと同じようにキツイ暴力をふるって、急に都合が悪くなったから帰ってくれと言うたよね…ムジュンしているわ!!」
「とし子…オレはとし子を助けてあげたいのだよ…ケアしてあげたいのだよ…」
「断固拒否するわよ!!アタシは女ひとりで生きて行くことを決意したから、男なんかいらないわよ!!あんたみたいなひ弱な男とやり直したいとは想っていないわよ!!これでわかったでしょ!!人の職場に土足で上がり込んで、下らないことをグズグズ言うのであればアタシの愛人の組長を呼ぶわよ!!」
アタシは、アイツに思い切り怒鳴った後、奥の部屋に逃げ込んだ。
ロッカールームに逃げ込んだアタシは、制服の下に着ていた青色のブラウスを脱いで、ロッカーに思い切り叩きつけた。
ロッカーのドアについている鏡に写っているアタシの顔は、50年分の激しい怒りに満ちていた。
アタシの目は真っ赤に染まって、くちびるが震えていた。
キーッ!!何なのよ!?
アタシは、ブラウスの下に着ていたラベンダー色のブラジャーを思い切りちぎった後、両手でほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を思い切りかきむしった。
アタシは、その場に座り込んだ後、声を震わせて泣いた。
8月23日のことであった。
いよいよアイツとアイツの家の親きょうだいと親族に鉄槌を下すときが来た。
この日は朝から雨が降った。
天気予報では、午後3時辺りから雨雲がさらに発達する見込みで、ところによっては大雨になる予報であった。
加えて、浅間山の噴火レベルが最大級のレベルに達したので、アタシが暮らしていた近辺の地区は立ち入り禁止になった。
アタシは、アイツの家の最期を見届けるために、朝イチの電車で嬬恋村へ向かった。
アタシは、赤茶色のバッグを持って松本駅から篠ノ井駅まで篠ノ井線の電車に乗って、篠ノ井駅からしなの鉄道の電車に乗りかえて、東御市の田中駅へ行った。
アタシが嬬恋村へ向かっている時であった。
アイツは、家に残っている女と浮気相手の男に刃渡りのするどいナイフを向けた。
「助けてくれ…この通りだ…グワ…」
女の浮気相手の男は、アイツに刃物で刺されて殺された。
女は、恐ろしい悲鳴をあげた後『お願い…助けて…アタシ…死にたくない…あなた…お願い…』と言うて命乞いをしていた。
アイツは、ナイフをにぎりしめてブルブルと震えていた。
その時であった。
浅間山は、ゴゴゴゴ…と恐ろしいマグマ音をあげていた。
その頃であった。
アタシは、しなの鉄道の田中駅からタクシーに乗って、県道からつまごいパノラマラインを通って、現場へ向かっていた。
しかし、途中の農場から一キロ先が通行止めになっていたので、アタシは途中でタクシーを降りた。
タクシーをアタシは、赤茶色のバッグを持って現場へ走って行った。
この時、雨の降り方が激しくなっていた。
アタシが通行止めのバリケードが立っているところに到着したのは、夕方4時55分頃であった。
その時であった。
(ゴゴゴゴゴ…ドカーン!!ドカーン!!ゴーゴーゴー!!)
浅間山は、噴火口から恐ろしい火柱を上げた後、漆黒の噴煙を伴った火砕流が流れ出た。
浅間山の火口から流れ出た漆黒の火砕流は、火山灰と噴石と火山弾と一緒にすずらん台へ流れてきた。
この時アイツは、ナイフで女を刺して殺した後、家の外に出ようとしていた。
その時、火山弾が容赦なく降り続けていた。
もはやこれまで…
そして…
漆黒の噴煙と噴石と火山弾を伴った火砕流が灼熱の溶岩とともに一気に流れ込んできた。
「グワー…助けてくれ…とし子…とし子…」
アイツは、家屋ごと溶岩に飲み込まれた後、鬼押し出しに葬られた。
アタシがいたところにも火砕流がせまってくる恐れがでたので、赤茶色のバッグを持って急いで逃げた。
目的は達成したから、今は逃げるしかない…
アタシは、赤茶色のバッグを持ってより遠くへ逃げた。
それから10分後に、アタシは東御市に続く県道へ着いた。
赤茶色のバッグを持っているアタシは、火山灰がほがその髪の毛に付着して、火山灰を含んだ雨で白のブラウスが汚れて、ボタンが3つ外れて、ブラウスの下から左の乳房が現れて、下の外れているボタンからヘソが見えている姿になっていた。
ボブソンのジーンズも、火山灰を含んだ雨でベトベトに汚れていた。
アタシ…
アイツとアイツの家の親きょうだいと親族に…
鉄槌を下したけど…
この先…
どうやって生きて行けばいいの…
折り返しの50年を…
どうやって生きて行けばいいの…
アタシ…
いやああああああ!!
【錯乱】
同時に、浅間山の火山活動も危険な状態になる一歩手前におちいったので、キンリンの住民たちは県外へ引っ越しする世帯が目立っていた。
アイツはこの日、所用で東京に滞在しているため、家を空けていた。
ダンナは、ひるまえに家の近くに到着した。
この時間帯、日本武道館で戦没慰霊式典が開催されている時間帯であった。
家財道具を運ぶトラックのカーレディオから式典の模様が流れていた。
アイツが家に帰ってきた時であった。
アイツと再婚した女が、一階の居間のソファーで男と抱き合っていたのをアイツが見たので、怒り心頭になった。
アイツは、助けを求める形で松本で暮らしているアタシの元へ行った。
アイツは、アタシがバイトをしているファミマに行って、もう一度やり直したいと泣きながらコンガンしたが、アタシは『拒否するわよ』と言うて断った。
アタシは、新しく来たお弁当を陳列ケースに並べる仕事をしながらアイツにこう言うた。
「あんたね!!急に都合が悪くなったからアタシとやり直したいと言うけれど、アタシはイヤと言ったらイヤなのよ!!あんたの弟からキツイレイプを受けて、心身ともにボロボロに傷ついているのよ!!あんたはアタシの言うていることがゼンゼン分かっていないわね!!アタシはあんたのことは一生うらみ通すと決めたから!!帰んなさいよ!!」
「とし子…頼む…もう一度とし子とやり直したいのだよ…ゆうきがとし子を犯して身体(からだ)と心をズタズタに傷つけたことは兄であるぼくが全面的に悪いのだよ…一生をかけてつぐなうよ…とし子…オレは…ひとりで生きて行けない…」
「ふざけたことを言わないで!!あんたはひとりの力で生きて行けないから、アタシに助けてくれと言うけれど…アタシにどうしてほしいのよ!?アタシにごはんを作ってほしいのかしら!?それとも、アタシの肌のぬくもりに甘えたいのかしら!?」
「とし子、この通り…オレのそばに帰ってきてくれ…」
「あんたはアタシの前のお嫁さんにも同じようなことを言うてたみたいね…そうでしょ!?アタシの前のお嫁さんにもアタシと同じようにキツイ暴力をふるって、急に都合が悪くなったから帰ってくれと言うたよね…ムジュンしているわ!!」
「とし子…オレはとし子を助けてあげたいのだよ…ケアしてあげたいのだよ…」
「断固拒否するわよ!!アタシは女ひとりで生きて行くことを決意したから、男なんかいらないわよ!!あんたみたいなひ弱な男とやり直したいとは想っていないわよ!!これでわかったでしょ!!人の職場に土足で上がり込んで、下らないことをグズグズ言うのであればアタシの愛人の組長を呼ぶわよ!!」
アタシは、アイツに思い切り怒鳴った後、奥の部屋に逃げ込んだ。
ロッカールームに逃げ込んだアタシは、制服の下に着ていた青色のブラウスを脱いで、ロッカーに思い切り叩きつけた。
ロッカーのドアについている鏡に写っているアタシの顔は、50年分の激しい怒りに満ちていた。
アタシの目は真っ赤に染まって、くちびるが震えていた。
キーッ!!何なのよ!?
アタシは、ブラウスの下に着ていたラベンダー色のブラジャーを思い切りちぎった後、両手でほがそ(ぐちゃぐちゃ)の髪の毛を思い切りかきむしった。
アタシは、その場に座り込んだ後、声を震わせて泣いた。
8月23日のことであった。
いよいよアイツとアイツの家の親きょうだいと親族に鉄槌を下すときが来た。
この日は朝から雨が降った。
天気予報では、午後3時辺りから雨雲がさらに発達する見込みで、ところによっては大雨になる予報であった。
加えて、浅間山の噴火レベルが最大級のレベルに達したので、アタシが暮らしていた近辺の地区は立ち入り禁止になった。
アタシは、アイツの家の最期を見届けるために、朝イチの電車で嬬恋村へ向かった。
アタシは、赤茶色のバッグを持って松本駅から篠ノ井駅まで篠ノ井線の電車に乗って、篠ノ井駅からしなの鉄道の電車に乗りかえて、東御市の田中駅へ行った。
アタシが嬬恋村へ向かっている時であった。
アイツは、家に残っている女と浮気相手の男に刃渡りのするどいナイフを向けた。
「助けてくれ…この通りだ…グワ…」
女の浮気相手の男は、アイツに刃物で刺されて殺された。
女は、恐ろしい悲鳴をあげた後『お願い…助けて…アタシ…死にたくない…あなた…お願い…』と言うて命乞いをしていた。
アイツは、ナイフをにぎりしめてブルブルと震えていた。
その時であった。
浅間山は、ゴゴゴゴ…と恐ろしいマグマ音をあげていた。
その頃であった。
アタシは、しなの鉄道の田中駅からタクシーに乗って、県道からつまごいパノラマラインを通って、現場へ向かっていた。
しかし、途中の農場から一キロ先が通行止めになっていたので、アタシは途中でタクシーを降りた。
タクシーをアタシは、赤茶色のバッグを持って現場へ走って行った。
この時、雨の降り方が激しくなっていた。
アタシが通行止めのバリケードが立っているところに到着したのは、夕方4時55分頃であった。
その時であった。
(ゴゴゴゴゴ…ドカーン!!ドカーン!!ゴーゴーゴー!!)
浅間山は、噴火口から恐ろしい火柱を上げた後、漆黒の噴煙を伴った火砕流が流れ出た。
浅間山の火口から流れ出た漆黒の火砕流は、火山灰と噴石と火山弾と一緒にすずらん台へ流れてきた。
この時アイツは、ナイフで女を刺して殺した後、家の外に出ようとしていた。
その時、火山弾が容赦なく降り続けていた。
もはやこれまで…
そして…
漆黒の噴煙と噴石と火山弾を伴った火砕流が灼熱の溶岩とともに一気に流れ込んできた。
「グワー…助けてくれ…とし子…とし子…」
アイツは、家屋ごと溶岩に飲み込まれた後、鬼押し出しに葬られた。
アタシがいたところにも火砕流がせまってくる恐れがでたので、赤茶色のバッグを持って急いで逃げた。
目的は達成したから、今は逃げるしかない…
アタシは、赤茶色のバッグを持ってより遠くへ逃げた。
それから10分後に、アタシは東御市に続く県道へ着いた。
赤茶色のバッグを持っているアタシは、火山灰がほがその髪の毛に付着して、火山灰を含んだ雨で白のブラウスが汚れて、ボタンが3つ外れて、ブラウスの下から左の乳房が現れて、下の外れているボタンからヘソが見えている姿になっていた。
ボブソンのジーンズも、火山灰を含んだ雨でベトベトに汚れていた。
アタシ…
アイツとアイツの家の親きょうだいと親族に…
鉄槌を下したけど…
この先…
どうやって生きて行けばいいの…
折り返しの50年を…
どうやって生きて行けばいいの…
アタシ…
いやああああああ!!
【錯乱】