医者の彼女
しばらくすると今度は和弥さんが来る。

和弥「…目覚めたんだな。気分はどうだ?」

「……」

久しぶりにちゃんと顔みた気がする。
和弥さんを見ると色んな感情が込み上げて
涙が溢れてくる。
それをみて少し慌てた様子の和弥さん。

和弥「ちょ…また苦しくなるから。泣くな。な?」

そう言って涙を拭いてくれるけど、全然止まらない。

今の和弥さんは、多分彼氏ではなく、
医者としてここにいるんだろうな。

その証拠に…

和弥「…なぁ。薬の事だけど、
そんなに使ってたのか?」

「……。」

私が泣く理由より先にこの質問。
何も答えないでいると

和弥「…大事な事だから。」

医者としてなら…仕方ない。

「…使ってました、最近は…殆ど毎日」

和弥「そっか…。…気付かなくて悪かった」

正直怒られると思ったけど、
予想外の反応に驚きながらも首を振る。

だって発作に関しては和弥さんが悪いわけではない。


和弥「忙しさにかまけてちゃんと見てなかった。
こんなに痩せたことにも気づかないくらい…。ごめん」

だんだんと彼氏として心配してくれる言葉に
嬉しくなるけど…その優しさも、もしかしたら
嘘なのではないかと勘ぐってしまう。

聞きたいことはたくさんあるのに聞けない。

そんな中、沈黙を破ったのは和弥さんのPHS。

和弥「悪い…とりあえず、慶太と話して明日、
呼吸器の方に移動するな。」

早口でそれだけ言うと、電話に出て仕事に
戻って行ってしまった。

そして、その日は救急の病棟で過ごして
次の日、呼吸器の一般病棟に移った。
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