医者の彼女

相変わらず個室を準備してくれる和弥さん。
普通の部屋でいいのに…

和弥「しばらく入院だからな。
…バイトも学校も休むって連絡しといたから。」

そっか…入院するのか…。
前みたいにすぐには帰してもらえないらしい。

昔の記憶と一緒に和弥さんの婚約者の話を
思い出してまた涙が溢れ出す。

和弥「…そんなに入院嫌か？」

違う。
確かに入院嫌だけど、今はそれじゃない。

首を振る。

和弥「どうした？お前やっぱ少しおかしいぞ、
何かあるなら言ってみ？」

そう言われて、少し迷ったが、聞いてみることにした。

「…こ、婚約者…いるんでしょ？」

和弥「⁉︎…お前…なんで…それ」

一気に顔色が変わる和弥さん。

あーやっぱり。

このままお別れなのかな…
そう思うと余計涙が止まらない。

和弥「いや。…違う。いや、違くないけど、
違う。ちょっと待て…」

明らかに様子がおかしい。
するとまたPHSがなる。

タイミング悪いなぁ…

聞くな、って事なのかも。

和弥「ちょ、ちゃんと説明するから。
…今は仕事しないと…後でくるから、待ってて」

そう言うと仕事に戻ってしまった。


和弥さんが出て行き、1人になる。


…違うって何が？
あの様子…婚約者がいる事は
間違いないのに、何が違うっていうの…？

わからない…
和弥さんの事が分からなくなってしまった。

いや…よくよく考えたら、私は和弥さんの
何も知らないのかもしれない。

誕生日だってそう。
あれから結局聞きそびれてるし、
好きな食べ物も音楽も、何も知らない…。

私…本当に彼女だったのかな…
情けなくなる。