医者の彼女
そうなると、寝てる場合じゃない。

和弥さんが帰ってくる前に出て行かないと、
顔を見てしまったら離れ難くなる。

重たい腰を上げて急いで荷物をまとめる。

幸い、必要なものは大してない。
すぐに荷物はまとまった。

ふと目に止まるネックレス。
誕生日プレゼントに貰った、生まれて初めての
大好きな人からのプレゼント。

これは持っててもいいかな…

自分勝手かもしれないけど…
私が、一瞬でも誰かに大切にされていたという
証が欲しい。

これさえあればもう何も要らないから…

そう思い、首にネックレスをつける。
小さくシンプルなデザインだけど上品な
デザインのそれは私の首元でキラキラと輝く。
和弥さんとの思い出はそんなに多くはないけど、
もらった愛情は図り知れない。

時計をみるとそんなに時間は経っていなかった。
もう少し時間あるかな…

使わせてもらった部屋、リビングを簡単に
掃除する。私に出来る事なんてないから、
せめてものお礼とお詫びとして。

そして最後に置き手紙を残す。

"お世話になりました。出逢えてよかった。
迷惑ばっかりかけてごめんなさい。
今までありがとう"

書きたいこといっぱいあるけど、
書けば書くほど涙が止まらなくなるから
それだけ書いて、家をでる。

家を出ようとした時、和弥さんから電話がなる。

声が聴きたいよぉ…。

思わず溢れる涙。全然止まってくれない。
でも声を聞いてしまったら側に居たいって
思ってしまうから。


ごめんなさい…ごめんなさい。



電源を落とす。
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