医者の彼女
その夜、寝ようと思って横になると、
何となく息苦しい感じがする。

嫌な予感はしつつも寝ようとすると、
咳が出て、止まらなくなる。

「ゴホッゴホッ…っ…ゴホッゴホッ」

…発作だ。

急いで吸入器を出し、吸入する。

最近は、うまく吸えるようになってきた。

そのおかげもあってすぐに発作は落ち着いたが、
なぜか気持ちが全然落ち着かない。




…怖い。




また発作が起きるのではないかと思うと
寝る事すら怖くなる。

今までは死ぬことなんて怖くなかったのに。

こうも苦しい思いをして、ましてや1人でいると、
全てが怖くなる。

そう思うと堪らなくなって、
ほとんど無意識に携帯を持っていた。


しばらく呼び出し音を鳴らすが出る気配はない。


…仕事中かな。

もしかしたら当直かもしれない…
何も考えずに電話してしまった事を後悔しながら、
諦めて電話を切ろうとした時



和弥[…もしもし。]

少し慌てたような和弥さんの声。

電話が繋がった安心感で言葉に詰まる。

「あ。…あの、春川ですけど…ゴホッ」

さらに発作直後で声が出にくい。

和弥[発作か⁉︎っ大丈夫か⁇]

「ゴホッゴホッ…すみません。大丈夫です…」

声を聞くと、涙がでてくる。


「あの…」


怖い。どうしたらいい?


なんて言えなくて、黙り込んでしまう。

自分で電話しておきながら…

何か言わないと…と思い、次の言葉を探していると

和弥[…今から行くから待ってろ]

そう言って電話が切られる。

すぐにショートメールで”部屋何番?”
ときたから、201です。と返す。
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