ブラックサンタクロース〜悪い子はどこ？〜

そんなことを考えながらあたしがテリトリーに戻ると、真っ黒なコートを着た知らない男がど真ん中に立っていた。誰こいつ？あたしに喧嘩売りに来たわけ？

「ここ、あたしのテリトリーなんだけど。今すぐ立ち去らないとテメェの顔面、原型がわからないほどにしてやろうか？」

低い声でそう言うと、男はくるりと振り返る。背は高いのに、顔は幼い。でもモデルみたいだ。大金を落としていってくれたあの女どもがきゃあきゃあ騒ぎそうな感じの……。

「物騒なこと言うねえ。女の子なのに」

男が困ったように笑う。あたしはフンと鼻を鳴らした。

「あたしはこの辺りじゃ悪で有名なの。そこらにいる男より強いし、怖いものなんてあたしにはない。んで、あんたは何しにわざわざここに来たわけ？名前は？」

「僕？僕はそうだね……ヴァイナハツマンとでも呼んでもらおうかな」

ヴァイナハツマンとは、ドイツ語でサンタクロース。こいつ、舐めてんの？

「はあ？何ふざけたこと言ってんだよ！！何しにここにお前は来たんだよ！！」