ねえ、知ってる?【上】
「別に別れたくて別れた訳じゃなかったしさ、高校も同じだったから卒業まではかなり引きずったんだ」
「そうだったんだ・・・」
声色でその時のことを思い出してつらくなっているのがわかる。
私まで胸が締め付けられた。
「ごめんね、暗い話がしたかった訳じゃないんだよ・・・。ただ、また付き合って、思い出が増えて、別れて・・・・・・っていう結末が来るのが怖い」
「そうだよね。大事なものを失くしちゃうのって、怖いよね・・・」
電車の中は段々人が増えて来て、いつもの朝が来たということを実感させられる。
自然と、私と陽十香は話をやめて静かに電車に揺られた。