ねえ、知ってる?【上】
「仮に雅暉さんじゃなくて他の“良い人”がいることでなぜか苗の仕事がはかどらなくなったとしたら、どうする? めちゃくちゃ面白い人で、ずっと苗を笑わせてくるから苗が集中して仕事が出来なくなったとしたら?」
「それは・・・・・・」
なぜか答えたくなかった。
答えると自分のこの気持ちを認めてしまうような気がして。
「でもそれが雅暉さんだったら、会えなくなるのは嫌だって思うんだろ?」
「うん・・・・・・」
「誰かのことを自然と考えるようになっちゃったら、それは多分もうその人に少なからず好意を抱いてる」
自然と考えるようになっちゃったら・・・・・・。
そうか、私は雅暉さんのことを気付くと考えるようになってしまった。
家にいる日も、考えるのはあの時のことや雅暉さんのことばかりだった。