ねえ、知ってる?【上】
ああ、今美舟さんはきっと雅暉さんのことを思っているんでしょう。
自分の恋人である雅暉さんのことを考えてそんな風に愛おしそうに笑うんでしょう。
「私も頑張ってもっと可愛くなります」
とってつけたような笑顔でそう言うことしか出来なかった。
『無理に大人になろうとしなくたって良いの!』
そんなの、嘘だ。
美舟さんがそんなに大人っぽくて色気のある女の人なのに、高校を卒業したばかりの子供っぽい私じゃダメ。
私は溢れてきそうな涙をこらえ、仕事を続けた。