ねえ、知ってる?【上】
まだ知り合って日は浅いとは言え、いつも笑顔の陽十香。
そんな陽十香の目の奥のさみしい色が見えてしまった。
「ご、ごめん!」
どう声をかけたらいいのかわからなかった。
それ以外に浮かぶ言葉はどれも違う気がして、苦しかった。
「私から聞いたし全然だよ。まあ、遠距離は無理じゃんって思ったよね、はは」
「そっかー・・・」
陽十香は私の知らない感覚をたくさん知っているんだろうな。
恋をする楽しさも、切なさも、別れのつらさも私は知らない。
「私、人を好きになったことないんだよね・・・」
生まれてから18年間、静かに、目立たないことを意識して生きてきた私。
一般的な学生の大半がしてきたであろう経験を全くしていない。