ねえ、知ってる?【上】
「そうなんだ! まだ苗にぴったりの素敵な人が現れてないんだね~」
「・・・・・・!」
陽十香は驚きも、笑いもしなかった。
私にとって、恋愛経験どころか、人に対して「好き」だという気持ちすら抱いたことがないということは、恥ずかしいことだった。
周りから聞こえてくる女子の会話や、友達同士でする話と言えば、大抵恋バナだった。
みんなと一緒に話していても、なぜだか自分だけひとりでいる気分だった。。
恋バナの何がそんなに楽しいのかわからなかったし、共感も出来なかった。
『好きな人いないの?』と聞かれるのが本当に苦痛だったし、出来ることなら私もそんな会話に参加してみたかった。