ねえ、知ってる?【上】



 まだこの時代に親の許嫁と結婚しなければならない、なんていう理屈が通ってしまうなんて・・・。


 雅暉さんの口元は笑っていたけど、目の奥は悲しそうだった。


 ずっと、ずっと二人が付き合っていなければいいのに、と思っていたけどこんなのは望んでいなかった。


 こういう、雅暉さんが傷付く別れ方は、違う。


 いや、何を考えいてるんだ私。


 仮に雅暉さんが私を選んだ末に美舟さんと別れたとしたら、美舟さんが傷付いていたじゃないか。


 元々、恋人のいる人を好きになってしまったんだ。


 明るい未来なんて、ない。


 あったとしても、誰かを傷付けてまで手に入れるものなのか・・・。


< 254 / 395 >

この作品をシェア

pagetop