ねえ、知ってる?【上】
「あー・・・・・・苗ちゃん、どれ頼む? 俺は、これにする・・・」
雅暉さんはそう言って味玉の入った一番オーソドックスなものを指さした。
目は合わなかった。
「あ、じゃあ私はこっちで・・・・・・」
私は味玉の代わりにほうれん草が入っているものを指さした。
雅暉さんは店員さんに声をかけて私の分まで注文してくれた。
いつもなら、空さんがいて、何も意識しなくても自然に会話が始まっているのに、今日は何を話したらいいのかわからなくて、時間が長く感じる。
「・・・・・・空、ちゃんと課題やってんのかなー。はは」
そう言って先に口を開いてくれたのは雅暉さんだった。