ねえ、知ってる?【上】
「はーーー! 食った食った。おいしかったね、苗ちゃん!」
「はい、あの・・・ご馳走様です」
「はいよ! ・・・・・・また行こうね」
いつもはすぐに次の誘いをしてくれるのに、少し間が空いた。
雅暉さん、さっきのを気にしてる・・・・・・。
私と雅暉さんはまた少しだけ気まずいまま、店の外を出た。
時計は22時半を指そうとしていた。
「駅まで送るね?」
「ありがとうございます・・・・・・!」
今日だって優しい。
いつもいつも、優しい。
誰に対しても同じように優しいのが少しつらい。