ねえ、知ってる?【上】
「中学の時、通ってた塾でバイトをしてた先生が好きだった。中三の時、五つ上のその先生に気持ちを伝えて付き合ってくれた」
「えっ、すごい」
「いや、その先生は俺のことが好きだった訳じゃない。ただ、俺は遊ばれてたんだ」
「え・・・・・・」
時計の針の音がうるさく感じる。
チクタクというその音がとても寂しい。
「それに気付いたのは高校に入って半年経った時。たまたま街で男と歩いてるとこを見かけて、問いただしたら『付き合ってたつもりはなかった』って言われて。まあ冷静に考えたら大学生が五つも年の離れたガキを相手にしてくれる訳なかったのかもしれねえ」
悲しい。