ねえ、知ってる?【上】
「苗ちゃん、入って!」
「あっ、はい、ありがとうございます」
お店に着くと、雅暉さんが自然に手を離してドアを開けてくれた。
手が離れてしまったのが少しつらかったけど、スムーズにそんなことが出来るところに年上っぽさを感じる。
大人の余裕だ・・・。
「足下ちょっと段差あるから気を付けて歩いてね」
「はい」
細かいところまで気を遣ってくれていて優しさを感じる。
胸がキュンとして、痛い。
「お、来たねキッシー! いらっしゃい。席、奥に用意してるよ」
「あざー!! 苗ちゃん、あの人が俺の高校の先輩でまっつんさんって人だよ」
私は「まっつんさん」に会釈をして席に通してもらった。