ねえ、知ってる?【上】



 さっき手を繋いでくれたことが頭から離れない。


 付き合ってくれないのにどうして手を繋いでくれたんだろう・・・。


 ひどいな・・・。


「今日デート出来て本当に楽しかったし、苗ちゃんが喜んでくれるのが嬉しいし、もう一度俺も恋愛したいなと思った。俺はもうこんな年だけど、苗ちゃんが学生でいられる時間は本当に貴重だから、俺のわがままでこれ以上振り回せない」


 甘いはずのケーキの味がしない。


 苦いはずのコーヒーも味がしない。


 嫌だ。


「俺のことを好きになってくれてありがとう」


 そう言った雅暉さんの目は少し潤って見えた。


 それを見て胸が痛くなった。


 やっぱり美舟さんには勝てないんだ。


 目の前にいる私よりも強い美舟さんとの記憶に嫉妬してしまう。


「あの・・・・・・勝手に好きでいても、良いですか・・・・・・」


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