ねえ、知ってる?【上】
「涙と救世主」
家に帰ってからは涙が枯れてしまうんじゃなかと思うほどに泣いた。
それでも涙は枯れなかった。
胸が苦しかった。
どうしたらいいのかわからなかった。
ただ、涙だけが流れていった。
私は今日あったことを陽十香に連絡した。
電話をする気にもなれなくて、『フラれた』とだけ送った。
正確には、前にもフラれているからその表現は正しくないのかもしれない。
あの後じっくり考えた上でのこの決断だから、本当に私には希望はないんだな。
また涙がこみ上げてくる。
雅暉さんと別れたのは8時半だった。
二時間があっという間に過ぎた。