ねえ、知ってる?【上】



 抱き締められた状態でそんなことを言われ、胸が熱くなる。


「可愛いよ」


「あり、がとう・・・・・・」


 大和くんの言葉はなぜか信じられた。


 大和くんは嘘をつかないとわかっているから、素直に喜べる。


 私は軽く大和くんの背中に手を回した。


 普通の女子よりは背が高い私も、男の大和くんに抱き締められると自分が「女の子」だと感じさせられた。


 大和くんのぬくもりに安心感を抱いた。


 私が抱き締め返すと、少しだけ大和くんが抱き締める力が強くなった気がした。


「苗、落ち着いた?」


 少しして大和くんが手を離してくれた。


 自分のしていたことを振り返って恥ずかしくなった。
 

「う、うん・・・・・・ありがとう。大和くん」


「・・・・・・じゃあ、俺帰るよ」


「もう、こんな時間だよ・・・・・・」



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