ねえ、知ってる?【上】
もう時計は一時を指していた。
「俺は男だから大丈夫。ごめんな、こんな遅くに家来て・・・」
「ううん・・・・・・」
私はなぜこんなことを思ってしまうのだろう。
数時間前に好きな人にフラれたばかりなのに、大和くんにそばにいて欲しいと思ってしまう。
帰らないでいて欲しいと思ってしまう。
優しくしたり、意地悪をしてきたり、コロコロと態度が変わる大和くんにずっとドキドキさせられている。
それでも私が傷付いた時には必ず優しくしてくれる大和くんに甘えたいと思ってしまう。
今日はずっと一緒にいて欲しい。
お母さんがいないことで、余計に寂しさが溢れてくる。
別にお母さんに自分の話をするわけではないけど、それでも家の中にお母さんがいるだけで安心する。
お母さんが家にいる時は、少し話をして「おやすみ」と伝えるだけで少しだけ気が和らぐ。