ねえ、知ってる?【上】



 でも今日はそのお母さんもいない。


 家の中に一人きりになってしまう。


 私は大和くんの服を掴んでいた。


 言葉には出来ないのに、勝手に体が動いていた。


『帰らないで』と必死に行動で伝えた。


「なに?」


 大和くんが顔をのぞき込んで聞いてきた。


 その顔は少し笑っていた。


「・・・・・・・・・」


 あまりにも自分がいけないことをしている気がして何も言えなかった。


 後ろめたい気持ちがある。


「言ってくれないとわからないけど」


 ・・・言えないよ。


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