ねえ、知ってる?【上】
桐谷くんの下宿先は駅から見える、一階が美容院になっているアパートだと陽十香が前に言っていた。
コンビニから出て目的の桐谷くんのアパートの前に着いた時、私は桐谷くんに電話をかけた。
自分は何をやっているんだろう、と発信する時に急に我に返った。
あんまり話したことのない桐谷くんにどうしてここまで?
でも知っている。
知っているんだ。
一人で熱にうなされる苦しさを。
風邪の時に自分で家事をしなければいけないしんどさを。
『・・・新田さん?』
出てくれるまでにかなり時間がかかった気がした。
よく考えれば私は男の子と電話したことがない。
急にドキドキしてきた・・・。