ねえ、知ってる?【上】



 三階の一番端っこの部屋の前に来た。


 308の文字が見える。


 深呼吸をして一応インターホンを鳴らした。


「き、桐谷くん、入るよ・・・? お邪魔します」


 一人暮らしらしい小さな玄関にきちんと揃えて並べられた靴。


 入ってすぐのところにある台所も綺麗に整頓されている。


 流しにある洗い物は昨日の晩のものだろうか。


 奥の部屋が寝室になっているのだろう。


 そこに入るまでの様子から、桐谷くんがきちんと家事をしていることはわかる。


 だから洗い物が残っていることが不自然に見えた。


 やっぱり、昨日は洗い物をする余裕もなかったんだ。


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