夏祭りが終わるまで、この花火が終わるまで
「そろそろ行かなきゃね」

僕は家を出て、ゆっくりと夏祭り会場へ向かって歩く。もうあの子は来ているのかな?大きくなったのかな?

胸を弾ませながら僕は暗くなり始めた空を見上げた。



夏祭りの会場は神社の鳥居をくぐった先にある。僕は神社の鳥居の近くであの子を待った。あの子を待つ間も妖たちは次々に神社の中へと入っていく。

「まだかな〜……」

あの子を待つ間、僕の胸はドキドキして止まない。初めて胸が高鳴った時、最初は何か病気になったんじゃないかと思ってしまったんだ。懐かしい。

「お兄ちゃん、お待たせ!」

高い声が聞こえてくると、僕は顔が赤くなるのがわかる。振り向けば赤い金魚の柄の浴衣を着た女の子が立っていた。茶色のショートカットを揺らして息を切らしている。

「落ち着いて。ほら、深呼吸」

僕はクスリと笑い、女の子の華奢な肩に手を置く。女の子の呼吸が落ち着くまで、その肩に触れていた。

女の子の名前は花日(はなび)。来年に中学生になる女の子。僕と出会ってからは、毎年夏祭りに一緒に出かけている。
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