シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
「私、こう見えてもあなたたちより五つ年上なんだよ? 既に颯太だって生んでるし、母親なの」

「……あ〜……そう、だね」

「ちょっとやそっとの噂とか悪口ぐらい、右から左に聞き流せるだけの度量はあるよ?」

「そっか。そーなんだ」

「うん」

 そこで鳴海くんが、ハァ、と物憂い息を吐いた。

「……やっぱ俺、沙耶さん好きだ」

「うん。私も鳴海くんが好き」

 ギュッと手を繋いだまま、電車は降りる駅へと到着した。

「じゃあ今日からこのままで学校行く、って事で良いですか?」

 そう言って鳴海くんは繋いだ手を上に挙げた。

「良いですよ? 行こう?」

 沢山の乗客に流されるようにホームへ降り立ち、改札を抜けた。大好きな人と恋人繋ぎで出勤するなんて、まるで夢の中にいるみたい。

 学校周辺まで二人で歩き進めると、チラホラと見知った顔が目に付いた。

「え、アレって?」

「購買のお姉さん、だよな?」

 ヒソヒソと囁くような声だったけれど、確かにそう聞こえた。

 学校の扉を抜けて、鳴海くんに手を振った。

「また後で買いに行くね」

「うん」

 そんな会話を残して。
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