シングルマザーの私が学生と恋♡するんですか?
10.恋人の私と母親の私


「ねぇ、沙耶っち。仁から付き合ってるって聞いたんだけど、本当?」

 その日の昼休み、購買に来た愛梨ちゃんが爛々とした瞳で尋ねてきた。

「え。あ〜……うん」

 鳴海くんの元カノなだけあって、愛梨ちゃんに話すのはどこか心苦しく感じられたけれど。彼女は全く意に介さず、口元に両手を添えた。

「わわっ、じゃあやっぱりそうなんだ??」

「……うん?」

「仁の初恋のお姉さん、沙耶っちだったって事だよね?」

「……あ。うん。私の方は……愛梨ちゃんから聞くまで思い出せなかったんだけど、そうみたい」

 そっかぁ、と物憂い吐息を漏らし、愛梨ちゃんが遠い目をした。

「なんかさぁ、そういうのって運命感じちゃうよね〜」

「え」

 運命、と聞いてわけもなくドキッとする。

「あ、あとさぁ、沙耶っち」

 愛梨ちゃんは、ポンと私の肩に手を置き、声を潜めた。

「仁がポロっと漏らした事なんだけど、沙耶っち子供いるって本当?」

「え…っ」

 慌てて周囲を見回し、私も声を潜めた。

「あ、うん。……実はそうなの」

 愛梨ちゃんは目を丸くして、言葉を飲み込んだ。
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